OTB、2024年度通期の決算を発表
2025年2月18日、ブレガンツァ(イタリア・ヴィチェンツァ県)– ディーゼル、ジル サンダー、メゾン マルジェラ、マルニ、ヴィクター&ロルフ、スタッフ インターナショナル、ブレイブ キッドを傘下に持ち、アミリにも出資する国際的なファッション&ラグジュアリーグループのOTBは本日、2024年12月31日時点の業績を発表しました。
主要業績指標
総売上高:18億ユーロ
純売上高:17億ユーロ
EBITDA;2億7,600万ユーロ(純売上高比16.3%)
ネットファイナンシャルポジション(IFRS第16号適用前):3,100万ユーロ
例年にも増して厳しく、変化の激しい市場環境のなか、2024年は好業績を収めた2022年及び2023年を受けて、地盤強化と成長の年となりました。直販チャネルへの投資に注力した長期的戦略の効果もあり、すでに進出している市場はもちろん、高成長が期待できる国々で商機をつかむべく新たに進出した市場においても、小売り事業の強化を推進できました。2024年通期の総売上高は18億ユーロで、恒常為替レートで比較すると2023年比では4.4%減の結果です。
純売上高は17億ユーロ(2023年比では恒常為替レートベースで3.1%減、期末為替レートベースで4.9%減)でしたが、これは卸売りチャネルが景気低迷の影響をとくに強く受けたことによるものです。これとは対照的に、直販チャネルは売上を伸ばし、メゾン マルジェラとディーゼルは好調を持続、さらに日本(恒常為替レートベースで16.3%増)や北米(恒常為替レートベースで13.3%増)などの重点的戦略市場の成長により、中国市場の減速をカバーできました。
グループEBITDAは、2億7,600万ユーロ
グループEBITは、4,400万ユーロ
2024年の投資総額は、ほぼ例年と同水準の7,700万ユーロで、OTBの全ブランドを対象とした小売り網の拡大と重要なイノベーションプロジェクトに重点的に投資しました。
主なハイライト
直販チャネルは、2023年比で7.4%の(恒常為替レートベース)の増収となりました。既存店舗の売り上げ増、61店舗の新規開店が寄与したもので、2024年度末現在の直営店舗数は、閉店数を差し引きして608店舗となりました。
メゾン マルジェラは4.6%(恒常為替レートベース)のの増収、ディーゼルも3.2%(同)の増収と昨年に続いて好業績を達成、2020年に立ち上げたブランド リポジショニング戦略が功を奏した形となりました。
日本と北米は、それぞれ16.3%(恒常為替レートベース)の増収、(同)13.3%の増収となり、グループの拡大・強化を牽引しました。日本はグループにとって最重要市場のひとつで、全事業の26%を売り上げています。
成長が見込まれる新規市場へ積極的な投資を行いました。
UAEのラグジュアリー販売企業、シャルー グループとジョイントベンチャー協定を締結しました。同社は、グループのラグジュアリーブランドの中東での知名度向上を図りました。
メキシコ市場へ参入するため、現地法人を設立。2025年の15店舗開業を皮切りに、今後5年間で約50店舗を新規オープンする計画です。
スタッフ インターナショナルを通じて、カルツァトゥリフィーチョ ステファンの過半数株式を取得しました。同社は、グループの長年にわたるサプライヤーで、高級靴メーカーとして知られています。今回の買収は、戦略的製品カテゴリーにおけるノウハウ取得を掲げるOTBの戦略に沿ったもので、OTBにとっては、2023年のフィレンツェの老舗革製品メーカー、フラッシネティの過半数株式取得に続くものです。
各ブランドとグループの主なトピック
昨今の市場環境を考慮すると、ディーゼルが3.2%の増収(恒常為替レートベース)は評価すべき実績であり、当グループがこの数年推進してきたリポジショニング戦略の成果をあげている証左と言えるでしょう。2024年も直販チャネルを対象に積極的な大型投資を継続し、ソウル、香港、シンガポール、東京・渋谷の旗艦店、そしてインドのベガルールなど成長が見込まれる地域への出店などアジアを中心に16店舗を新設しました。ディーゼルはまた、世界最大のアイウェアメーカー、エシロールルックスオティカとアイウェアのデザイン、製造、国際流通について10年間の独占契約を締結し、ミラノ2024年春夏ショーにコレクション第1弾を出展するなど順調に推移してきた2022年以来のパートナーシップをさらに発展させました。ディーゼルは、マーケティングと製品を対象とした新たなブランディング戦略と投資が功を奏して強力なブランドアイデンティティを生み出すことに成功、強固で多様な顧客ベースを惹きつけるに至っていますが、これはブランドの将来的な発展の礎となるものです。若い消費者の関心を捉えた主要施策として、ファッションの世界と音楽の世界を橋渡しするべく、世界の主要都市を巡るレイブパーティを組織しています。
ラグジュアリー分野では、メゾン マルジェラが成長路線(恒常為替レートベースで4.6%の増収)を続け、グループ内における中心的な役割を確立しました。この10年間で最高のショーのひとつと評価を受けたオートクチュール、2024年「アーティザナル」コレクションのショーは世界的な成功を収め、メゾン マルジェラはその存在感を確固たるものとしただけでなく、ブランドが持つ純度の高さ、不服従の思想、類まれなフォームを融合させる力、革新的な素材開発、現代性、技術力は、ラグジュアリー分野で異彩を放っています。
ジル サンダーは、グループの小売り事業拡大戦略のもと、戦略的重要性がきわめて高い地域に新規出店しました。中でも東京・銀座の旗艦店は床面積が1,000㎡超で、同ブランドとしては世界最大規模です。また、新たな製品カテゴリーで存在感を高めるため、これまで培ってきたアイコニックなクラフツマンシップとデザイン面での個性を反映させて、2024年12月に初のファインジュエリー コレクションを発表いたしました。このコレクションは、ジル サンダーのモダンで洗練された品揃えとラグジュアリー分野における地位のさらなる強化に貢献しています。また化粧品大手のコティとのライセンス契約更新後2年目となる2025年1月には、同社初のプレミアム・フレグランス・コレクションを発売、高級フレグランス市場へ正式に参入しました。
マルニは2024年、フレグランス製品及びビューティ製品の開発・製造・グローバル展開に関する20年のライセンス協定をコティと締結しました。また、国際的なセレブを起用し大規模なキャンペーンを実施、ミラノ・ファッションウィークでは2025年春夏ショーを開催して大成功を収め、国際的な注目を集めました。
1993年にデザイナーでアーティストのヴィクター・ホスティンとロルフ・スノランによって設立されたヴィクター&ロルフは、2024年、創立30周年を祝うため、ミュンヘンのクンストハレで展覧会を開催。「ヴィクター&ロルフ:ファッション・ステートメント」では、同ブランドの100点に及ぶアイコニックなガーメントが燦然たる輝きを見せましたが、これはこの記念すべき節目にアートとオートクチュールの融合を最高の形で提示するものとなりました。ラグジュアリーフレグランス分野では、ロレアルとの長きにわたるライセンス契約のおかげで、グローバルな成功を収めることができました。2025年2月、OTBはデザイナーのヴィクター・ホスティンとロルフ・スノランとのコラボレーションを更新すると発表、今後5年間に渡りオートクチュール メゾンのクリエイティブディレクションを率います。
スタッフ インターナショナルは、OTBブランドの生産及び流通拠点として、グループにおける重要戦略資産です。加えて、ディースクエアードのウエアの生産と国際流通に関し、独占ライセンス契約を締結しています。同ブランドは、卸売り流通モデルにほぼ全面的に依拠しており、2024年の業績は減速しました。スタッフ インターナショナルは、550社を超える稼働サプライヤー(うち90%はイタリアが拠点)を擁する広範なネットワークを管理しており、強固なサプライチェーンの運営に中心的な役割を果たしています。戦略的製品カテゴリーにおける実績あるノウハウを社内資産化するというOTBの戦略に沿って、スタッフ インターナショナルは、グループの長きにわたるサプライヤーで、イタリアの老舗高級靴メーカーであるCalzaturificio Stephenの過半数株式を取得しました。
スタッフ インターナショナルは、サプライチェーンを金融面から支援する取り組みであるC.A.S.H.¹プロジェクトへの関与を強化するとともに、ドキュメンタリーシリーズ「M.A.D.E. Made in Italy, Made Perfectly」²を通じたコミュニケーションキャンペーンにも積極的な投資を行っています。また、今年で4期目を迎える社内アカデミーのScuola dei Mestieri(スコーラ ディ メスティエリ 職業学校)を通じて、職人の成り手がどんどんと減っているなか、将来的にメイド・イン・イタリーを担うべき人材の育成にも取り組んでいます。スタッフ インターナショナルが提供する職業訓練が受け入れられ、ファッション産業において職人技が要求される仕事に対する関心が若者の間で高まってきたことにより、Scuola dei Mestieriの入学希望者と就職者は着実に増え続けています。この職業学校を立ち上げて以来、訓練生の85%以上はグループ企業に就職しています。
ブレイブ キッドは、グループ及びサードパーティーのブランドで子供服の生産と世界的流通を専門に手掛けており、地位の強化および、重要な新サステナビリティ・イニシアティブを発表しました。その例として、環境負荷が少ない、再利用可能な新パッケージシステムを導入した結果、水の使用量、CO2排出量、エネルギー消費量を75%削減できました。
直販チャネルの成長と小売り事業の拡大
2020年に策定された3ヵ年戦略計画の中で開始された長期戦略の実施を受け、直販チャネルの拡大を進行中。2024年には7.4%(恒常為替レートベース)の増収となり、現在では総売り上げの57%を占めています。
この躍進を支えるもう一つの要因が、2022年にOTBが立ち上げたリテールエクセレンス・プロジェクトです。これは、グループ内のリテール文化の発達を促進すると共に、パフォーマンス向上を目的し、戦略、運用の両面で利用可能なあらゆる手段を駆使して実施されています。
地域:中東及びメキシコ市場に参入
2024年に16.3%(恒常為替レートベース)の増収となり、グループ事業の26%を占めるに至った日本市場や、13%の増収を達成した北米のような、すでに強固な地盤をもつ戦略地域での存在感をさらに高める一方で、急成長が見込まれる新たな地域へも直接管理方式で重点的な投資を積極的に推進しています。
その目的に向けて、グループは中東においてラグジュアリー販売でトップを走るシャルー グループと25年の戦略的ジョイントベンチャー協定を締結。この協定により、OTBはこの地域³でラグジュアリーブランドを大幅に拡大することが可能になります。この5年で15店舗を新規店舗開店する計画で、皮切りとなる2025年にはまず2店舗を開店のほか、eコマース・プラットフォームや現地のマーケティングイニシアティブを強化します。この新規開店計画には、ドバイのメゾン マルジェラの店舗やリヤドのマルニの店舗を補完する効果も期待されています。
OTBはさらに、2024年にメキシコに現地法人を設立し、今後5年間で約50店舗の新規開店を計画。2025年はディーゼル、メゾン マルジェラ、マルニが15店舗を開業する予定です。
こうした活動の結果、グループは30か国に直販拠点を展開し、130市場で販売チャネルを稼働させます。
デジタルイノベーション
生産プロセスと製品革新への投資に注力し、とくに内部プロセス、ロジスティクスオートメーションソリューション、人工知能、顧客エンゲージメントの合理化に重点を置きます。
OTBは2024年、グループのグローバルな成長と業務効率の向上をサポートするため、新たな統合プラットフォームを活用して事業活動の調和とデジタル化を図る戦略プログラムを稼働させました。このプロジェクトは、OTBのすべてのブランドの運営をグローバル規模で行い、財務、販売、流通機能の運営モデルを改革、簡素化することを目的としています。
さらにグループの流通拠点も、コレクションの出荷や配送の管理効率を高める革新的なオートメーションシステム採用により強化されました。Rfid(Radio-frequency identification: 無線周波数を介したタグからの識別情報読み取り)を利用した製品識別、リアルタイムモニタリング、及び全プロセス分析のためのプロセスマイニングツール、輸送ソリューションの策定やサービスレベルのモニタリングのための輸送管理システム、コスト管理、CO2排出量など、生産性向上を目的とする最先端技術も相次いで導入されました。
人工知能への投資も継続して実施。特に重点を置いているのは製造プロセスの効率と従業員の生産性の向上、顧客の体験のさらなる改善です。
主な取り組み :
ディーゼルの製造プロセスに独自の人工知能ソフトウェアを導入。このソフトウェアは、ミラノ工科大学との共同開発により、特定の製造工程や作業工程によって、製造プロセス内で生地が受ける可能性のある変化を予測することを目的としています。
従業員の生産性を向上させると共に、日々の活動を支援するためのAIソリューション。特に試作分野で導入されたパイロットプロジェクトは、AR(拡張現実)眼鏡を使用して製品開発をリモートで行い、また、不良品の輸送・出荷コストを削減し、従業員の業務活動を円滑にさせ生産性向上を支援します。
グループのブランドの一部のeコマースウェブサイトに、顧客に製品を勧めたり、スタイリングや購入の手助けをするチャットボットを導入しました。
オーラ・ブロックチェーン・コンソーシアムの創設メンバーとして、OTBはそのプロセスにもブロックチェーンテクノロジーを導入しており、2024年秋冬コレクションでは、ジル サンダー、メゾン マルジェラ、マルニの各ブランドの全製品にデジタル証明書を添付しました。このために、グループは全生産プロセスに対して、認証の作成に必要とされる基本的な処理を2つ追加しました。ひとつは、すべてのウェアとアクセサリーにNFC(近距離無線通信)タグをつけること、もうひとつは、オーラのブロックチェーン・プラットフォームに全製品を登録すること。こうした業務を標準化することにより、ブロックチェーン登録と、年間150万点以上にも及ぶOTBのラグジュアリーブランドのデジタル真贋認証が可能となりました。
サステナビリティ
OTBは、そのブランドや参加企業とともに、「責任を持つ、勇敢である」をモットーとする、グループの責任ある開発と成長を牽引するサステナビリティ戦略を推進しています。
年間を通じて、ディーゼルは製品のサステナビリティ、業界他社との連携を行い、消費者の関心を高める実績をあげたという意味で突出した存在でした。実際、ディーゼルは、環境負荷が少ないデニムの開発への取り組みを多面的に取り上げた忠実なドキュメンタリー「デニムの裏側」を制作しています。また、UNIDO(国連工業開発機関)とのパートナーシップを強化し、使用済み繊維からデニムを製造する革新的な循環プロジェクトへの取り組みも継続して行っています。さらに、ディーゼル・リハブデニムや、他ファッションブランドとのコラボレーションにより未販売あるいはデッドストックからカプセルコレクションを作るディーゼル・ラブズ・プロジェクトなどの環境負荷の少ない新コレクションを立ち上げました。2024年9月に発表された2025年春夏コレクションは、1万5千キロのデニムの端切れを敷き詰めた巨大なキャットウォークを制作し、循環型モデルの重要性に対する関心を高め、サステナビリティをクリエイティビティの主要資産とする道筋を示すものでした。
循環型経済を実現することにより、ディーゼルは2024年9月にイタリアファッション協会のサステナブルファッションアワードで、サーキュラー・エコノミー賞を受賞しました。
2025年2月、ディーゼルは英国王チャールズ三世(当時ウェールズ公)によって創設されたSMI(持続可能な市場のためのイニシアティブ)のファッション・タスクフォースに参加しました。SMIは、各セクターの主要企業がアライアンスを組んで、グローバルな価値創造の現場でサステナビリティを実現しようという取り組みです。
OTBグループはまた、サプライチェーンを支援する投資を継続することを再確認しました。そのひとつであるC.A.S.H.⁴プロジェクトは、サステナビリティに取り組むパートナー企業を金融面からサポートする取り組みで、2013年から実施されています。現在、54社の稼働サプライヤーが加盟し、95%の債権が譲渡されています。2013年のプロジェクト開始以来の支払総額は、6億1,000万ユーロを超えました。
OTBは、サプライチェーンへの金融支援を提供すると共に、メイド・イン・イタリーの卓越性を映像で紹介する活動にも取り組んでいます。ドキュメンタリーシリーズのM.A.D.E. Made in Italy, Made Perfectly⁵はOTBのプロジェクトで、イタリアのファッション・サプライチェーンの卓越性を体現しているグループのビジネスパートナーの魅力あふれるストーリーを語ることでイタリアのサプライチェーンの実態を伝え、その強化を目的としています。最後のエピソードとなる「献身と起業家精神をめぐるレンツォ・ロッソの物語」は、アカデミー賞を受賞した映画監督ガブリエレ・サルヴァトレスを議長として編成された特別審査団により、フィルム・インプレッサ・ウニンドゥストリア特別クリエイティビティ賞を受賞しました。
ファッションセクターの課題にシナジーと協業の両面からのアプローチにより取り組むグループのビジョンに沿い、OTBはイタリアの大手ファッションブランドとイタリアファッション協会の協力のもと設立したRe.Creaコンソーシアム内でのコラボレーションも継続しています。Re.Creaは、寿命を迎えた繊維製品の管理プロジェクトの開発、さらに革新的なリサイクリング・ソリューションの研究、実施を目的としています。
OTBファウンデーション
グループの非営利組織OTBファウンデーションはイタリア内外で活動しており、2024年、OTBと傘下のブランドは、財団が立ち上げた子どもや女性、困難な状況に直面している人々などの救済を目的に社会的影響のあるプロジェクトや活動の支援をさらに強化しました。ディーゼルとOTBファウンデーションは、「Children Are Reading」プロジェクト、すなわちディーゼル関連の工場やサプライヤーで働いている人々の子ども達を対象に、その教育や訓練を支援する3年間のプログラムを立ち上げました。またジル サンダーは、限定Tシャツを発売し、子どもの支援を目的とする財団のプロジェクトに、各アイテムの売上の50%を充てる取組みを始めました。その第1弾としてアフガニスタンのカピサにある、同国で初めて且つ、唯一となる少女のための公営児童養護施設を支援しています。女性支援に関しては、財団は暴力被害者のインド女性やアシッドアタック(酸攻撃)の生存者たちを対象とする重要な社会復帰プログラムへ継続的に支援しており、具体的には手術費の資金提供や心理的、専門的な援助をしています。OTBとOTBファウンデーションの緊密な協力を強化するというビジョンに沿って、グループは従業員を対象に初のボランティアプログラムを立ち上げました。発足してすぐに130人以上が参加しており、その活動範囲は児童養護施設から困難な状況にある女性や子どもを支援する組織、OTBファウンデーションが推進する「ソリダリティ・エンポリアム」と多岐にわたり、イタリア国内8つのボランティア活動へと広がっています。
「2024年はラグジュアリー分野にとって厳しい年でしたが、私はこの1年に達成した結果に満足しています。直販チャネルを拡大する戦略を引き続き推進しましたが、好ましい成果を上げることができました。その一方で、卸売りチャネルは落ち込み、全体の業績の足を引っ張る結果となりました。このことは、私たちの製品やクリエイティビティは全社規模で影響を与え合っていることを示しています。私は、中長期的な事業業績の方が短期的な財務状況よりも大切だと考えています。私たちはテクノロジーとマーケティングに継続して投資を行っています。全社すべての部門でAIを活用していますが、これはAIが従業員にとってきわめて価値の高い支援ツールであると信じているからで、活動の管理は迅速かつ効果的に推進できるようになり、会社の競争力も強化されています。さらには、サステナビリティ投資も拡大させています。なかでもディーゼルは、革新的な処理方法を採用することでコレクションの環境負荷を大幅に軽減したのはもちろん、デニム製造における化学製品や水の使用量の削減にも成功しています。最後になりますが、OTBファウンデーションと共同で実施した活動すべてにも大いなる誇りを感じています。これは、わがグループの掌中の珠ともいうべきもので、企業が創造、生産、販売、回収し、そこから得た価値の一部を社会に還元するという私の循環型ビジネスコンセプトにおける最後の環なのです。2024年には、いじめの問題に取り組む学校における教育プロジェクトや、戦争で荒廃した国々における危機管理、暴力の犠牲になった女性の支援に注力しました。私たちが何ごとかを成し遂げたとするならば、それはすべて女性たちのおかげなのです。私たちが、女性たちがいまだに直面せざるを得ない不平等に対する戦いでいつでもその最前線に立とうとする理由もまさにそこにあるのです」
レンツォ・ロッソ OTBグループ創業者兼会長
「2024年は、ラグジュアリー分野全体にとって一筋縄ではいかない年でした。このチャレンジングな環境のなか、私たちは投資とマネジメント構造の強化を軸に、グループの地盤固めと拡大の道に乗り出し、未来に明るい兆しを感じるまでに至ったのです。私たちは、好業績をあげた日本や米国などの主要市場を強化する一方で、中東やメキシコなど急成長が見込める地域における活動を拡大しました。こうした地道な活動に支えられて、私たちはどんどんとハードルの上がる野心的なゴールを達成すべく歩み続けます。挑戦すべき課題が複雑に絡みあうなか、私たちは戦略的焦点をブランド、製品、サプライチェーンに絞り込んで、エクセレンスの達成に向けて絶えざる努力を重ねることができたのです。そして、このエクセレンスこそが私たちの主たる強みであり、消費者にとっても、ますます重要さを増している価値なのです」
ウバルド・ミネリOTB最高経営責任者(CEO)